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Venice

ベニスを想う [ミッシェル・バテュ]

旅を愛し、訪れた場所から授かるインスピレーションを心にあたため、創作の源へと変えていくミッシェル・バテュ画伯。そんな彼女もっとも愛する場所がベニスです。朝に夕にその姿を美しく変えていく街の魅力をあますことなく描いた作品とともに、画伯のベニスへの尽きぬ想いを語っていただきました。

何百年にもわたって、ベニスは多くの人を魅了してきました。世界中の情熱的なベニスファンと同様、私にとっても、ここは世界で最もロマンチックで魅力的な街。いつも私は、ベニスを描きたいという思いに駆られています。
サンマルコ広場の海辺に建つドゥカーレ宮殿の、ヴェネツィア・ゴシック様式の魅惑的な建築様式と装飾は信じがたいほどの優美さを備え、私をエキゾチックな想いへと誘います。
夕暮れどき、空が真っ赤に染まり、水面が空の色を帯びるころ、ゴンドラに揺られて水上からベニスの街の光景を目にしたとき、まるですべての時間が止まってしまったかのように煌々たる感情が私を支配します。これ以上の至福の時間があるでしょうか・・・。
次第に夜の沈黙が訪れると、夕暮れのまどろみはやがて静寂へと変わっていく。静かに、おだやかに、ただ時間だけが流れていきます。
ベニスは私にとって、ヴィスコンティやフェリーニ、そしてティツィアーノの世界そのままなのです。いつまでもこの美しさを伝え続けていけますように―――。

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